電子の流れが滞ったら
ミトコンドリアの内膜にある電子伝達系で 電子が5種類の酵素複合体を 次々と流れていく間に 内膜をはさんだ プロトンによる電位差勾配が形成され その電位差の解消により ATPが産生されることを説明してきましたが 酵素複合体のどれかの調子が悪くなって 電子の流れが滞ってしまったら どうなってしまうのでしょう? <活性酸素が産生されてしまう> 酵素複合体の調子が悪くならなくても 栄養素の過剰摂取により 電子が大量に入りこんで速く流れるときや 電子の最終的な受け取り手の酸素が不足するときも 電子伝達系のなかで 電子の流れの滞りが生じてきます そうなると 電子が伝達系から漏れて ミトコンドリア内の酸素と 不適切な形で結合してしまいます 通常は 電子と酸素は伝達系の最終段階で結合して 水になりますが 電子が伝達系の途中で漏れると 非生理的な電子と酸素の結合が起きて その結果 出来てくるのが 活性酸素・フリーラジカルです 活性酸素・フリーラジカル よくテレビや雑誌などで 老化の原因とか 動脈硬化の原因とか さんざん悪者扱いされている 有名なアレです 活性酸素・フリーラジカルの正体は 電子伝達系での電子の渋滞により生じてくる 有害な副産物なのです 呼吸で取り込まれる酸素の90%以上は ミトコンドリアで使われますが そのうちの0.1~2%が 活性酸素・フリーラジカルに変わり 1年間で2Kg以上作られるとされています 活性酸素・フリーラジカルが 具体的に体にどのような悪さをするかは 長くなりますから また別の機会に詳しく解説しますが 生命活動に必要なエネルギーの ATPが産生されるミトコンドリアで しかも そのエネルギー産生過程で 健康を害する悪者の 活性酸素・フリーラジカルが産生されてしまうなんて ずいぶんと皮肉なものです やはり世の中というものは 細胞内器官のレベルでも 不条理にあふれているのですよ?(笑) 以前に説明しましたが ミトコンドリアの祖先は エネルギーを産生するけれど 活性酸素・フリーラジカルも産生してしまうという そんな悲しい宿命を有しているが故に ヒトの細胞に寄生して 自らのDNAの多くを核というシェルターに移行したと 考えられています キリスト教的に解釈すると 活性酸素・フリーラジカルの産生は ヒトがもって生まれた原罪のようなものでしょうか? <活性酸素の産生を防ぐためには?> さて 活性酸素・フリーラジカルが できるだけ産生されないようにするためには 電子伝達系内で 電子の流れが滞らないようにすることが大切で そのためには *必要量を上回る多量の栄養素を摂取して ミトコンドリアに大量の電子を供給することにより 負担をかけないようにする *食後の運動でATPを消費して 電子伝達系内での電子の流れが滞らないようにする *急激な運動などで ミトコンドリアが酸素不足に陥らないようにする といった注意が必要になります 食べ過ぎや運動不足は ミトコンドリアでの電子の流れの滞りを招き 活性酸素・フリーラジカルの産生を誘導してしまう そんなことを イメージされたことがあるでしょうか? ミトコンドリアの不条理を克服するためにも 不摂生には気をつけましょう! というのが 今日のオチです(笑)
高橋医院