番組は 舞台を再びフランスに戻します

フランスでは 自由 平等 博愛 の建国の理念が 
今でも尊ばれ
国民の多くがそのことを誇りにしています

フランスの3色旗に自由 平等 博愛の言葉が書かれた図

何回も言及して恐縮ですが

パリ市内で不幸なテロが起きた時
現場に献花するご婦人が涙を流しながら
自由 平等 博愛 と
口に出されていた映像を見て

書き手は 不謹慎な言い方かもしれませんが 
本当にびっくりしました

フランス国民にとって 
建国の理念は
そこまで肌に染みついたものなのですね

そして今
その理念がどこまで多様性を受入れられるか 
試されています


他人を受け入れないフランス人の姿

他のヨーロッパ諸国と同様
フランスにおいても 
移民はとても大きな社会問題です

3色のスカーフを巻く女性のイラストが描かれた壁画

都市地理学者のクリストフ・ギリュイ

フランスは 
アメリカやイギリスとは異なる形の
異文化を共和国に同化させる形での
多文化共存モデルを築こうと試みたが 
その試みは失敗に終わった

と語ります

なぜなら 
多文化共存社会では
人は他人と交わろうとせず 
他の文化とは同化せず
距離を保ったままでいるから

そして

これが 
現在のヨーロッパを覆っている
アイデンティティの緊張関係の原因となっている

と推論します

ここ20年余りで 
フランスは変わってしまったと嘆く人も多い

かつてはフランスも多くの移民を受入れ 
上手に共存していたのに

今では郊外に住む移民の若者は 
年を追うごとに他人を信用しなくなり
差別されていると感じる移民の若者は
過激化する

そんな彼等はもちろん
移民を寛容に受け入れてきた 
昔の愛すべきフランスを知らない

現在の若者の無理解を嘆くフランス人の老人

そこで再び 問われます

自由 平等 博愛 の精神は 
フランス社会で生き残れるのか?

自由 平等 博愛 の精神は フランス社会で生き残れるか疑問視する図


政治学者のドミニク・レニエ

ドミニク・レニエ

ここ20年間で
国内のコミュニティでの分断の感情 分裂が
著明になってきていて

3つの理念への信念の
衰退 精神の弱体化が見られる

と危惧します

精神分析が専門のシシリア・フルーリー

シシリア・フルーリー

ルネ・ジラールの
政治共同体の運営には 
外部の敵 内部の敵 の存在が必要 

という指摘を引用し

今のフランス社会を成り立たせている
外部の敵はテロリスト 
内部の敵は失業者 難民 移民で

他者への不信が 
新たな敵を次々と生み出し続けている

と嘆きます


どうしてフランスは 
そんなに変わってしまったのか?

1968年の5月革命の影響がある 
と考える人たちがいます

教育制度へ不満を持つ学生から始まった
政府に対する抗議行動が
やがて暴動となり 

労働者や市民に広がっていき
パリの街は破壊され 
フランスは騒然とした状態になりました

1968年の5月革命の様子

過去の戦争を知らない若者たちによる 
消費社会への反発

その動きは
日本を始め 
豊かさを享受し始めた全世界に広がっていきますが
過度の急進性から支持を失っていき 
やがて衰退します

このときに生じた 
絶対自由主義の大きな動きが
フランス社会を大きく変えた

今までの歴史が完全に断絶され 
重要な慣習 文化が捨てられ
個人の自立性ばかりが
強調されるようになった

というのです

ちょうどその頃から 
欲望の資本主義が加速化し
経済の論理ばかりが社会の争点となり始め
社会の分断も生まれてきた

そして
社会の分断が加速度的に顕著化し
やがてテロや難民の問題が生じる


こうしたフランス社会の分析の過程で
エドマンド・パークという 
18世紀のアイルランドの哲学者・政治家の
人の性に対する警句も紹介されます

人間は 
いたずらに現状からの変化ばかりを
求めてしまう

そのため 
輝かしいフランス革命も 
恐怖政治になりかわってしまった

我々の本性が抱える大きな過ちは
次から次へと 
飽くことなき欲望の追求の果てに
手に入れた全てのものを 
失うしかないことである

エドマンド・パークの著書の表紙

また 政治哲学のマルセル・ゴーシュ

人は 理性的な理由ではなく 
情動的な理由で思考を維持する

と注意を促します

理性と情動のバランスを示す図

一方 社会学者のジャン=ピエール・ルゴフ

そもそも人の根底には 
破壊的欲望がある 

と語ります

人の根底には破壊的欲望があることを示す図

これらの警句や 
人の性に対するペシミステイックな分析を受けて
番組は問います

純粋な夢は 
破壊的欲望に変わってしまうのか?

歴史は繰り返すのか?


どうなるのでしょう?
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