新型コロナ・PCR検査 抗原検査 抗体検査の使い分け方
以前にご紹介した 新型コロナウイルスの唾液を用いたPCR検査が 6/2から行えるようになりました 但し 症状が出てから9日目以降になると 唾液からの検出率が低下するので 9日目までに限定されます まだ一般の医療機関で 受け付けられるか不明ですが 簡便な検査なので広い普及が期待されます ところで 新型コロナウイルスに関する さまざまな検査法が紹介されて かえって頭の中が混乱している方が多いようで 「唾液で抗体がわかるのですか?」 と聞かれる患者さんもおられました (唾液で抗体がわかるかは検討されています) そんな状況を配慮してか 5/25に 感染症学会 環境感染学会 臨床微生物学会が共同で 新型コロナウイルスに対する3つの検査法 (PCR検査 抗原検査 抗体検査) の使い分け について提言を行いました <検査の必要性> 全ての検査は 「医師が診療を行い 必要と判断した場合」 にのみ行われます なんとなく心配だからという理由では 検査は受けられませんので ご理解ください <PCR> @原理 患者の鼻の奥(鼻咽頭)を拭って検体を採取し 新型コロナウイルスに含まれる 特定の特異的なRNA配列を RT-PCR法などにより増幅して検出します @長所 検出感度が高い @短所 検査に1〜5時間と長時間を要する 専用機器と検査に熟練した人材が必要 費用が高い 鼻咽頭拭い液の採取時は 医療従事者や他の患者への感染予防が 徹底された環境で行う必要があります <抗原検査> 5月13日から使用可能になり PCR検査の実施可能件数が 1日で17000件なのに対し 抗原検査は1日で20000件 実施できるようになる予定です @原理 新型コロナウイルスに特徴的な 抗原となるタンパク質の存在を調べます PCR検査と同様 鼻に綿棒を入れて鼻咽頭拭い液を検体にします @長所 検体採取から約30分で判定が可能で 特別な機器や熟練したスタッフは必要ありません @短所 簡便性が高い反面 PCR検査に比べ精度が劣ります またPCR検査と同様 鼻咽頭拭い液の採取時は 感染予防が徹底された環境で行う必要があります @PCRとの比較 国内臨床検体を用いた PCR検査との比較試験では 陰性一致率は98% 陽性一致率は37% 行政検査検体を用いた比較では 陰性一致率は100% 陽性一致率は67% つまり 間違って陽性結果がでることは少ないけれど 感度が低いので 陰性でも 感染を完全に否定できません @意義 陽性の場合は 確定診断とすることができ 自宅待機 指定された宿泊施設 病院への入院 のいずれかの指示が出されます 陰性の場合は 感染を完全に否定できないため 確定診断のために PCR検査を行う必要があります 一定量以上のウイルスがいないと 検出できないという限界があるので ウイルス量が少ないと思われる無症状者でなく あくまで症状が出現している患者さんに 行うべき検査です PCR検査体制の負荷を減らす という意義はあると思われます <抗体検査> @原理 新型コロナウイルスに感染した後に 体内に作られる抗体の血液中の有無を調べます 血液検査でわかるので 咽頭拭い液を採取する必要はありません @長所 簡易キットを使えば 採血から約20分で判定でき 検体採取時の感染リスクが低い キットによっては 現在感染していることを示すIgM抗体 過去に感染したことを示すIgG抗体 を別々に検出できます @短所 特異抗体の産生には感染後2〜3週間が必要なので 感染して間もない時期で 体内に十分な抗体がつくられていないと 陰性と判定されることもありえます また 新型コロナウイルスでは *抗体検査で陽性になっても その抗体がどの程度持続するか *再感染を防ぐことができるか などについて明らかになっていません これが このウイルスのいやらしいところです したがって 陰性でも 感染していないとは限らず 陽性でも 過去の感染は証明できても 感染を防ぐ保証にはならない可能性があります @意義 現在の感染の有無を調べるのでなく 感染の既往を調べるための意義があり 市中での感染の広がりの程度を推計できると 期待されます もう1点 抗体検査で注意したいのは 検査にどのようなキットを用いているかです 質の悪いキットだと 普通の冬風邪のコロナウイルスに対する抗体を 検知してしまうことがあり 結果に信頼性がおけませんから 注意する必要があります 以上 簡単にまとめると *体内にウイルスが存在するか (=現在 感染しているか)を調べるには PCR法 か 抗原検査 感度はPCR法の方が優れている *以前に感染したことがあるか調べるには 抗体検査 ということになります 少しでも頭の中が整理できたでしょうか?
高橋医院