バイオテクノロジーの進歩
新たに生み出す社会的問題 論争点として
最近注目されているのが

受精卵に対する遺伝子操作 ゲノム編集を認めるべきか?

ということです

ゲノム編集については
このブログで既に詳しく解説しましたし
昨年のノーベル化学賞を受賞し話題になりましたが

昨年のノーベル化学賞の発表の様子

新たに開発された技術により
非常に効率よくかつ的確に
DNAを編集できるようになりました

その技術を用いて受精卵のDNAを編集して良いのか?
という問題提起です

この点も既にご紹介しましたが
大事な点なので復習をしようと思います

ゲノム編集による受精卵の遺伝子操作が許されると
人工的に編集されたDNAを持つ人間が生まれてくるので
まさに 新たな人間 ポストヒューマンが
現実的なことになります

受精卵のゲノム編集の問題点を説明する図

こうした受精卵の遺伝子操作に関して
“リベラルな優生学”を訴える人々は

ナチスが行ったような強制ではなく
親やカップルが どのような子を産むかを考える過程で
子供の将来を有利なものにしようと考えて
受精卵の遺伝子を改良しようとすることは悪いことなのか?

と 問題提起を行っているそうです

読み手の皆さんは どう思われますか?
意見が分かれるところだと思います

“ポストヒューマン”をどう評価するか?

バイオ保守派と呼ばれる人々は
バイオテクノロジーによる“ポストヒューマン”を否定する立場をとり
前述したフランシス・フクヤマのように
人間には尊厳があるのだから 人間の遺伝子改変は認められない
と主張します

バイオ保守派の意見をまとめた図


一方 トランスヒューマニズム 人間超越主義
と呼ばれる考え方の人々は
現在の人間の本性は バイオテクノロジーにより改良できる
人間の身体的・精神的能力を増強することが どうしていけないのか?
と “ポストヒューマン”の出現を肯定的に歓迎します

トランスヒューマニズムの意見をまとめた図
トランスヒューマニズムについて書かれた書籍

どちらの意見を良しとするか 判断が難しいですね

読み手の皆さんは どう思われますか?

書き手は 結構迷いますが
どちらかというと否定的に考えています


また バイオテクノロジーの進歩は
*老化 死の克服は意味があるのか?
*不老不死になることは幸せなのか?
という問題提起もすることになります

近代科学の創始者たちには
老化克服という願望がありましたが

現代のバイオテクノロジーは
今まで自然なものとして授けられた生物的な条件を
自分たちの手で能動的に改変することを可能にしつつあるので

バイオテクノロジーにより 老化に打ち勝てる
若返りも可能になる時代がやってくるかもしれません

老化に関する研究についてまとめた図

この現実に どう対処した方がいいのか?

こうした流れに異を唱える人々は 老化克服によって生じる
*不公平性
*人生の退屈さ
*人格の同一性の欠如
*人口過剰
*健康維持費用の増大
といった問題点を列記されて

不老不死になることは幸せなのか? と問われます

この問題も 容易に答えが出ないですね
再度 読み手の皆さんは どう思われますか?
高橋医院