受容体とは
胆汁酸が色々な受容体に結合して ホルモンのように働いて 脂質や糖質の代謝に影響を及ぼすことを 紹介しましたが よい機会ですから 受容体 について解説しましょう 受容体は 細胞が外界からの物質に反応するときに 重要な働きを示しますが 病気の治療薬の標的分子としても 大きく注目されています ですから 受容体について理解することは さまざまな生体反応を理解するうえで大切ですし いろいろな病気の治療について理解するために とても重要です <情報伝達物質と受容体> 生体内には 甲状腺や副腎などの内分泌臓器があり そこから分泌される ホルモンは そのホルモンが特異的に結合する受容体を 発現する細胞に働きかけて さまざまな作用を発揮します また 生体内にはホルモン以外にも 神経伝達物質 細胞増殖因子など 特異的受容体に結合して作用を発揮する液性因子が たくさん存在します そのような液性因子を 情報伝達物質 と呼びます 既にご紹介した *脂肪細胞が分泌するアディポカイン *筋肉細胞が分泌するマイオカイン *免疫細胞が分泌するサイトカイン も 全て情報伝達物質です さらに最近は 短鎖脂肪酸や胆汁酸などの代謝産物も 情報伝達物質として働くことが 明らかになってきたわけです このように 生体内では膨大な種類の情報伝達物質が駆け巡り 色々な細胞に働きかけ さまざまな作用を発揮しているわけですが 情報伝達物質が作用を発揮する過程の第1歩が 受容体との結合です <受容体とは?> 受容体は 情報伝達物質(リガンド)と結合し 細胞内に情報を伝えるカスケード(情報伝達系)を スタートさせる物質です 受容体は 特定のリガンドとしか結合しません こうした現象は 科学的には特異性と呼ばれ よく 鍵(リガンド)と鍵穴(受容体)に たとえられます リガンドが結合して 受容体が活性化されることにより 細胞内の情報伝達系が動き始め 最終的に核のDNAに伝えられ 特定の遺伝子が発現し 遺伝子からタンパク質が翻訳されて そのタンパク質の働きにより さまざまな機能が現れるようになります そして この機能が 情報伝達物質の作用になります ということで 受容体との結合がなければ 情報伝達物質は働けません ある情報伝達物質の作用が 特定の病気に関連している場合は その情報伝達物質受容体の受容体を ブロックする化合物を作れば それが病気を治せる薬になります 臨床の場で使われている薬剤の 実に45%は 受容体を標的として作用して 効果を発揮する薬剤です 抗アレルギー薬も コレステロールを下げる薬も 血圧を下げる薬の一部も 全て情報伝達物質と受容体の結合を ブロックする薬なのです 受容体の重要性を ご理解いただけたでしょうか? <受容体の種類> 受容体は 細胞のどの部位に存在するかで 大きくふたつに分類されます @細胞膜貫通型受容体 細胞膜の表面に存在するのが 細胞膜貫通型受容体 リガンドが ペプチドホルモン 神経伝達物質 増殖因子といった 細胞膜を通過できない水溶性の情報伝達物質の場合 リガンドを膜表面で受容します 細胞膜はリン脂質の海原のようなもの とお話ししましたが 細胞膜貫通型受容体は 細胞膜の脂質二重層に埋もれて存在していて リガンドが結合して活性化されると 細胞膜の近傍に存在する Gタンパク質 チロシンキナーゼなどの酵素を活性化し それを途端にして 細胞内情報伝達経路が活性化されます この情報が 最終的には核に至り 遺伝子発現が起こってきます @核内受容体 ビタミンA ビタミンD ステロイドホルモン 甲状腺ホルモンなどの 細胞膜を自由に通過できる 脂溶性(疎水性)の情報伝達物質は 細胞質または核内に存在する受容体に結合します 細胞質でホルモンと結合した受容体や 核内でホルモンとした受容体は それぞれ ホルモン(リガンド)により活性化され 核内のDNAの特定配列に結合して 遺伝子の転写を開始させます こうした機序により 情報伝達物質がリガンドとして受容体に結合すると 最終的にさまざまなタンパク質が産生されて 色々な生体反応が起こってくるわけです *情報伝達物質と受容体は 鍵と鍵穴の特異的な関係で *鍵により鍵穴が開かれると その作用 情報は核に到達し *最終的に遺伝子が発現してタンパク質が作られ そのタンパク質により 鍵の作用が発現する イメージできましたか? 次回は 細胞膜貫通型受容体について もう少し詳しく説明します
高橋医院