ここで もう一度 
脂質異常症について説明します

<脂質異常症を構成する3種類の病態>

脂質異常症には 
3種類の病態があります

脂質異常症は3種類の病態から成ることを説明する図


@高LDL-C血症

3種類の中で 
もっとも多くみられる病態です

LDL-Cは 前回も説明しましたように
食べ物に含まれるコレステロールや
肝臓で作られたコレステロールを
全身に運ぶ働きをしていますが

過剰に存在して
体内で利用されないまま残ると 
酸化されてしまいます

LDLが酸化される過程を示す図

LDL-Cの酸化は 
血管壁のなかで起こることが多く

酸化されたLDL-Cは
マクロファージという掃除細胞に取り込まれ
それが血管壁の中にたまると 
動脈硬化を起こします

LDL-C(正確に言うと酸化LDL)は
動脈硬化を引き起こす危険なコレステロールで

血中にLDL-Cが
必要以上にたくさん存在することは
忌々しき事態なのです

動脈硬化が起こるメカニズムについては 
また詳しく説明します

@高中性脂肪(TG)血症

特に中高年男性では
このタイプも 
高LDL-C血症に負けず劣らず多くみられます

コレステロールに比べてTGが多いことの危険性は
それほど詳しく認識されていないようですが

コレステロールとはちょっと違う意味で 
とても危険なのです

たとえば TG値が高いと
LDL-Cは酸化されやすくなり 
HDL-Cの量は低下します

この結果 動脈硬化が進みます

各種の脂質の変化で動脈硬化が進むことを示す図

高TG血症の危険性については 
後ほど稿を改めて説明します

@低HLD-C血症

頻度は高LDL-C血症や高TG血症より低いですが

それらの病気にひけをとらないくらい 
狭心症 心筋梗塞への関与は大きく
侮ることはできません

原因は
肥満 食事 運動不足 喫煙などの
生活習慣によるものが主です

低HDL-Cの原因となる生活習慣をまとめた図

脂質異常症の各病態について
簡単に説明しましたが

では 脂質異常症だと 
具体的に何がどうマズイのでしょう?

<脂質異常症により生ずる危険>

疫学研究が明らかにしたところによると

脂質異常症だと 
心筋梗塞や狭心症になりやすい

脂質異常症だと 心筋梗塞や狭心症になりやすいことを注意するポスター


LDL-C値が
140mg/dl以上だと 
80mg/dl未満に比べて
心筋梗塞や狭心症の発症率が2.8倍も上昇します 

またLDL-C値が2~3割低下すると
心筋梗塞や狭心症の発症率が約3割低下します

LDL-C値が高いと心筋梗塞や狭心症の発症率が2.8倍も上昇することを示すグラフ

TG値が165mg/dl以上だと 
84mg/dl未満に比べて
心筋梗塞や狭心症の発症率が2.9倍上昇します

中性脂肪値が高いと心筋梗塞や狭心症の発症率が上昇することを示すグラフ

HDL-C値は
低下に伴い心筋梗塞や狭心症の発症率が高くなり
40mg/dl未満になると3~5倍にも上昇します


HDL-C値が低いと心筋梗塞や狭心症の発症率が上昇することを示すグラフ

<脂質異常症は動脈硬化を誘導する>

脂質異常症で
心筋梗塞や狭心症の発症率が上昇するのは
動脈硬化が進展するからです

酸化LDLなどが悪さして
血管の壁が厚くなり  動脈硬化になると
血管の内部が細くなり 
血流が滞りやすくなりますし

動脈硬化になると血流が滞りやすくなることを示す図

血管内皮が傷ついていると 
そこで血の塊(血栓)ができやすくなります

血栓の形成過程を示す図


<脂質異常症の危険性が認識されていない>

そうした血栓が心臓を栄養する冠動脈に詰まると
心筋梗塞や狭心症になります

このように 
脂質異常症は心臓病に直結する
危険な病気なのですが

糖尿病や高血圧に比べると
その危険性の認識度が低いと 
危惧されています

たとえば最近の日本では

血中TGだけでみても 
基準値上限を上回る人は
男性では30~50代にかけて増え 
50代ではおよそ2人に1人
女性では50代から増え始め 
60代でおよそ3人に1人  で

糖尿病や高血圧の患者さんの数に
ひけをとらないにも関わらず

自分が脂質異常症であることを
自覚していない方が多く

自覚している人は
わずか30%にすぎないと報告されています

脂質異常症は 
糖尿病や高血圧と比べて自覚症状が少ないのが問題です

糖尿病のように 
だるくなったり 
喉が渇いて小便の回数が増えたりしないし

高血圧のように 
頭が痛くなったり肩が凝ったりしない

そして それが故に
症状なしで心筋梗塞や狭心症まで
一直線に進行してしまうリスクがあります

症状がないから 余計に危険なのです

動脈硬化は自覚症状がなくても進行することを注意するポスター

高血圧や糖尿病に比べると 
脂質異常症は軽視される傾向があり

健康診断で
脂質異常症のため再検診を勧めると書かれても
忙しいから後で再検診してもらおうと思いつつ
ついつい忘れがちで後回しになり

気がついたら
救急車で病院に運ばれる運命にあるのが
脂質異常症の怖さです

しかも 
欧米では血中LDL-C値は着実に低下傾向にあるのに
日本では逆に増えているのです

脂質異常症を侮っていると 
本当に危険です!

これから どんなに危険か 
詳しく説明していきます
高橋医院