高度肥満と外科療法
特に著明な高度肥満の場合は 治療のために外科手術を行うという 以前ではちょっとイメージしづらい治療法が 現実のものとなっています <高度肥満とは?> BMI>35の人は「高度肥満」と定義され 日本人の0.5%ほどが 高度肥満と推測されています 高度肥満は 通常の肥満より憂慮すべき病態です @注意すべき合併症 *睡眠呼吸障害 睡眠時無呼吸 *心不全 *肥満関連腎臓病 *皮膚疾患 偽性黒色表皮腫 頸部 腋下 鼠径 肛門周囲 接触部の摩擦疹など *運動器疾患 変形性関節症 腰痛症など が挙げられますが いずれも減量治療により改善 軽減します @社会的問題 精神的問題 高度肥満の人は 肥満の原因に 社会的 精神的問題が関与しているのが特徴的です 高度肥満を起こしやすい精神疾患として *ストレス過剰 社会への適応障害 *特異的なパーソナリテイ *うつ 統合失調症 摂食過剰症 などがあります また *自分に自信がない *傷つきやすい といった特徴的な性格を有している場合が多い @高度肥満治療の注意点 高度肥満の人は 無理な減量計画を立てると ドロップアウトしやすいのが特徴で その人の生育歴 肥満歴を調べ 過食・運動不足に陥りやすい生活習慣を見出して 生活環境 対人関係も含めて その是正方法を見出していくことが大切です 必要に応じて 心療内科などと協力して 治療を進めていく必要があります <外科療法> 高度肥満の人の治療では 手術で胃を縮小させる外科療法も 選択肢のひとつになります @適応 *6か月以上の内科治療で効果が得られない BMI>35kg/m2の高度肥満の人で *年齢は 18歳~65歳 が 外科療法の適応者です また 糖尿病などの 肥満にともなう代謝合併症の治療目的では BMI>32 kg/m2からが対象者となります 外科療法の適応者は 全国で30万人いると推定されています @腹腔鏡下スリープ状胃切除術 (2014年から保険適応) *胃の外側2/3を切除して 胃を細長く小さくする手術です *胃の外側の部分からは 食欲を増進させ太るように導くホルモンが出ているので この部分を切り取ってしまうのが目的の手術です *術後に体重が減少してくる前から 血糖 脂質 血圧の改善が得られます @効果 *手術により 30%に及ぶ体重減少が期待できます *25~35Kgの体重減少が 5年以上継続します *手術を行った80%の人で 糖尿病が寛解します 内科治療では20%が限度なので はるかに好成績です また 体重が減る前から血糖値の改善がみられます 心不全 腎障害 睡眠時無呼吸なども改善します @減量の機序 *GLP-1 GIPなどのインクレチン 手術後にこれらの血中濃度が上昇し 消化管運動 食欲が変化し 体重が減少します *胆汁酸 手術後に血中濃度が上昇し FXR TGR5の内因性リガンドとして作用し 糖 脂質 エネルギー代謝に影響を及ぼします *腸内細菌叢の変化 術後には腸内細菌叢が変化し エネルギー代謝・消費 体脂肪蓄積 胆汁酸代謝に 影響を及ぼし 体重減少に関わると考えられます こうした機序により 体重減少や糖尿病の改善が得られると 考えられています
高橋医院