女性の肺 消化器 運動器疾患
女性の病気の特徴を説明にする 性差医療の解説シリーズの最後に 生活習慣病や動脈硬化以外の病気について 解説します <COPD 慢性閉塞性肺疾患> COPDは タバコの煙などの有害物質を 長期間吸入することで生じる肺の病気ですが 有病率は 男性16.5% 女性5%と男性に多いものの 最近は男性の有病率が減り 女性で増えています 喫煙者の15~20%程度に発症しますが 同じ喫煙量では 女性の方が発症しやすいのが特徴です 代表的な呼吸機能の一秒率の低下は 女性の方が大きく 女性は喫煙感受性が高く 低用量の喫煙でも急速に肺機能が低下し COPDを若年から発症するとされています 女性のCOPDの症状は 息切れが強く 症状によるQOL(生活の質)の低下が著しく 増悪の程度が高く 不安やうつ病をともなうことが多いのが特徴です <睡眠時無呼吸> 肥満などにより 睡眠時に無呼吸状態が度々おこる病気で 男性に多いのですが 女性では閉経後に有病率が増大してきて エストロゲンが関与する可能性が 示唆されています <機能性胃腸障害> 内視鏡で検査しても異常が認められないのに さまざまな胃腸症状が認められる病気です @機能性デイスペプシア 女性に多いことが報告されています @過敏性腸症候群 欧米では女性に多いとされていますが 日本では性差は認めていません 女性は 便秘より下痢が多く 生理の時に症状が増悪するという特徴があります エストロゲンの変動が 消化管の知覚神経の感受性に影響を及ぼすためと 考えられています <肝障害> @NASH 男性のピークは30歳代ですが 女性は50歳代から急増し 60歳代にピークを迎えます NASHの高齢女性は 糖尿病合併率が高率で 肝硬変に進行しやすいのが特徴です 若年男性は生活習慣の改善 高齢女性では糖尿病のコントロールが それぞれの治療の基本になります @アルコール性肝障害 女性は男性の2/3の飲酒量で 肝障害をきたしてしまい 少ない飲酒量で 重症型肝炎を発症しやすく 短期間で肝硬変に至ることが 女性のアルコール性肝障害の特徴です 女性患者さんの比率は アルコール性肝障害全体では8% 肝炎で13% 重症型で27%と 病状の進行に伴い 女性比率が上がります こうしたことが起こる背景には アルコール性肝障害の原因となる エンドトキシンへの感受性が 女性の方が強い可能性が示唆されています <骨粗鬆症> 圧倒的に女に多い病気で 閉経を迎える50歳前後から 骨量が急激に減少するので 有病率が増えます 女性での発症率は(男性) 40歳代 2.9%(0%) 50歳代 4.8%(6.5%) 60歳代 22.2%(7.0%) 70歳代 42.9%(22.3%) 80歳代 65.1%(13.0%) と報告されています また 骨粗鬆症による 大腿近位部骨折の 男女比は 1:3.2~3.7 橈骨遠位端骨折の 男女比は 1:3~4 と 女性で圧倒的に多い エストロゲンにより 骨量が維持されているのに 閉経後のエストロゲン分泌低下によって 骨吸収が亢進し 骨粗鬆症になりやすくなります また 女性は男性に比べて もともと骨量が少ないため 形成・吸収のバランスが崩れたときに 症状が表面化しやすいのです <サルコペニア> 70歳代までは 有病率の男女差はありませんが 80歳以上になると 女性で60% 男性は30%と 女性で有意に多くなります
高橋医院