新型コロナ・日本免疫学会シンポジウム
昨年12/8に 日本免疫学会の年次学術集会が開催されました 免疫学会は「免疫オタク」の書き手にとって いちばん勉強になり面白い学会で 毎年楽しみにしていましたが 昨年度は新型コロナの影響により 例年と異なりオンラインでの COVID-19と免疫に関するシンポジウム となりました 書き手は 診療前や診療の合間に オンラインで覗いていたので レポートしようと思います まず最初に NIHのファウチ先生がご挨拶 トランプに首にされずに良かったですね(笑) つぎに登場されたのは お馴染みのYaleの岩崎先生 まず 現在の新型コロナウイルス感染の現状 問題 について *過去に季節性の風邪コロナウイルスに感染した人の多くは 新型コロナに対する免疫を有している *新型コロナウイルスへの再感染が 世界各地から報告されている *集団免疫を形成するために ワクチンが必要とされている *いくつかのワクチンの第3相臨床試験では とても良い結果が得られ 接種が開始されている と提示されました そして これまでに岩崎先生のラボから発表されたデータが まとめられます まず 新型コロナウイルス感染における免疫動態について *Tリンパ球が減少し 炎症性サイトカインが増加する *体内のインターフェロン 炎症性サイトカインの量は ウイルス量と正の相関を示す *予後が悪い患者さんでは 軽症の患者さんに比べて 感染後12日以内に炎症性サイトカインが増加している *予後の良し悪しにより 増加するサイトカインのパターンが異なる *予後が悪い患者さんでは IL-18 好中球 顆粒球が増加する とまとめられます さらに 感染初期におけるインターフェロン反応と予後について *感染後すぐにインターフェロンがでる人は すぐにウイルスが消失して 軽症ですむ *インターフェロンが後から出てくる人は ウイルスが持続するので 中等~重症になる *遺伝的にインターフェロンが産生されない人 インターフェロンに対する抗体を持つ人は ウイルスがずっと増殖しているので重篤になる ことを明らかにされ 早期にインターフェロンを投与すれば 重症化しない可能性を示されました また 男性は女性より予後が悪いことを 以前に紹介しましたが その理由として *男性は炎症性サイトカイン産生量が多い *女性はTリンパ球応答が強い *男性でTリンパ球応答が弱い人は重症化する *女性で炎症性サイトカイン産生量が多い人は重症化する *女性は歳をとってもTリンパ球応答が減弱しないが 男性は減弱する ことを示されました なるほど~ 楓さん 勉強になりましたか?(笑) ついで このブログでも度々紹介した ラホイヤ研究所のリーダーのアレサンドロ先生が 新型コロナウイルス感染における 獲得免疫の重要性について強調されました 新型コロナウイルス感染では *さまざまなウイルス成分に対する CD4 CD8のTリンパ球反応が高率に見られ *この反応は過去に季節性コロナウイルス感染を起こした人でも 認められることが多い ことを示されました また 新型コロナウイルス感染に対する獲得免疫は 歳をとると減弱する傾向があることを示し その持続期間について *抗体反応 CD4 CD8 Tリンパ球それぞれで異なり 数ヶ月経つと減少する傾向を認めるが *5ヶ月の時点で 90%の患者さんはいずれも保持できていて 10%程度の患者さんは6ヶ月の時点で減少している とデータを示されました 再度 なるほど~です 楓さん 勉強になりましたか?(笑) で このあと色々と面白いレクチャーがありましたが 診療もあり あまり集中して聞けず 最後に宮坂先生が まとめのレビューをされました 宮坂先生が強調されたことは *新型コロナウイルスに対する免疫反応は 抗体だけが重要なのではない *さまざまな獲得免疫の協調が 感染制御に重要である *高齢者では しばしば獲得免疫が低下していて 重症化するリスクがある *重症者では軽症者より抗体反応が増強していて こうした患者さんでは 抗体が機能していないか あるいは 病態を悪化させると示唆される *こうした人では 抗体が不適切な場所で作られ その親和性が低い可能性がある *抗体がなくても Tリンパ球反応だけで感染制御できる可能性がある *免疫の持続期間は個人差があり それが病態形成に関わる *集団免疫の獲得には 抗体だけでなく 自然免疫やTリンパ球反応も関与している *現在の日本では 未だ集団免疫は形成されていない といったことでした 岩崎先生が示された 初期のインターフェロン治療の可能性は興味深いし アレサンドロ先生が示された 獲得免疫の持続期間も面白かったです 宮坂先生は 相変わらずのまとめ上手で 今や「新型コロナと免疫」の語り部になられましたね 抗体だけが重要でなく さまざまなまざまな獲得免疫の協調が 感染制御に重要である 本来 抗体が産生される胚中心で産生されない抗体が 新型コロナウイルス感染の病態を 悪化させている可能性がある というメッセージは印象的でした 個人的には これまで勉強してきたことのまとめにもなって とても有意義でした
高橋医院