これまで度々
新型コロナウイルス免疫の話題を紹介してきましたが

7/18のNHK・BS1スペシャルでは
宮坂昌之先生と
イエール大学の免疫の岩崎明子先生をゲストに迎えて

宮坂昌之先生と岩崎明子先生

新型コロナ 免疫の謎に迫る

という番組を放送していました

番組の宣伝画面

NHKは最近 免疫に凝っていますね!(笑)


これまで解説してきたことの
ちょうど良いまとめになると思うので
番組内容を紹介します


まず冒頭に宮坂先生が

新型コロナウイルスは

サイトカインストームを起こして病態を悪化させる

悪玉抗体も生じてくる

*中和抗体が長続きしない

などといった 
免疫学的な悪さをするウイルスなので
手強い相手だと印象を述べられます

印象を述べられる宮坂先生


ついで

自然免疫と獲得免疫

自然免疫と獲得免疫について説明する図

@獲得免疫と免疫記憶

免疫記憶について説明する図

@サイトカイン

サイトカインについて説明する図

といった ウイルス感染に関わる
免疫学のメカニズムを解説したあとに
メインの話題に展開していきます


<インターフェロンとサイトカインストーム>

新型コロナウイルス感染症の病態を悪化させる
サイトカインストームについては
何回か紹介してきましたが

炎症性サイトカインの異常増加により
免疫細胞の異常な活性化が起こり
全身の臓器の血管内皮細胞を傷害し
血栓も起こさせて
全身状態の急激な重症化を引き起こします

サイトカインストームについて説明する図


この番組で新たに注目したのが
インターフェロンです

インターフェロンは
侵入してきた感染微生物に反応して
最初に産生されるサイトカイン

I型インターフェロンは
それ自体が抗ウイルス作用を有しています

その昔 夢の物質として一躍脚光を浴びましたし
慢性B型 C型肝炎の治療薬として
書き手もずいぶんとお世話になりました

インターフェロンについて説明する図


岩崎先生のグループでは
新型コロナウイルス感染では
感染初期にI型インターフェロンの産生が誘導されないので
ウイルスが増殖してしまうことを
明らかにされました

岩崎先生のグループのデータを示す図

岩崎先生は
インターフェロンが誘導されずウイルスが増殖すると
マクロファージが炎症性マクロファージに転換され
さまざまな炎症性サイトカインがさんせいされるので
サイトカインストームが起こるのではないかと
推測されています

つまり 感染後の早い段階で
強いインターフェロン応答が起こらないことが
サイトカインストームの根本原因だというのです

説明される岩崎先生


<高齢者の重症化と免疫反応>

さらに岩崎先生は
いくつかの興味深いデータを紹介されます

炎症性サイトカインの産生が多いと重症化する

男性の方が死亡率が高く
女性の方がTリンパ球の反応が良い

データを示される岩崎先生

高齢者は
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのような
RNAウイルスに反応してインターフェロンを産生できない
だから重症化するのではないか?

高齢者の重症化について仮説を述べられる岩崎先生


このお話に 宮坂先生が

男性は高齢になると
Tリンパ球の反応が起こりづらく 重症度と相関する

加齢により
Tリンパ球の産生が減るだけでなく
さまざまなストレスによりTリンパ球の数が減る
慢性炎症もストレスの原因になる

と補足されました

ストレス 慢性炎症によるTリンパ球の減少を説明する宮坂先生

高齢男性が重症化しやすい原因のひとつかもしれません


<治療薬としての免疫抑制薬>

サイトカインストームなどの
異常に活性化された免疫反応が
病態の悪化に関与していることが明らかにされたので

免疫反応を抑制させる薬が
新型コロナウイルスの治療薬として使えないか?

という話になります

IL-6の反応を抑制する抗体治療薬のアクテムラ

アクテムラのバイアル

免疫応答を広く抑制する副腎皮質ステロイド

副腎皮質ステロイドのバイアル

などの有効性が紹介され

岩崎先生が
こうした免疫抑制薬は
過剰な免疫反応により病態が進む前に使うと有効
とサジェストされました

サジェストされる岩崎先生

これらの薬は既に臨床の場で使われていて
重症患者さんを救う効果が期待されています

副腎皮質ステロイドは つい最近
日本の新型コロナウイルス治療のガイドラインにも
有効な治療薬として掲載されました

 

高橋医院