彼が日本で感じたこと
昨年末に放送された ドイツの若き気鋭の哲学者 マルクス・ガブリエルの 「欲望の哲学史」という特番については 既にレポートしましたが その前に 彼が去年6月に来日し 東京 京都 大阪で 講演や対談を行った様子が NHKスペシャルで放映されていました 番組のタイトルは マルクス・ガブリエル 日本を行く 欲望の時代の哲学 その内容について くわしく紹介しようと思います 彼は 以前にこのブログでも紹介した NHKの 欲望の資本主義 欲望の民主主義 のシリーズに登場し 書き手はその語り口に 強烈な印象を受けました だから彼には 興味津々! 彼が来日して講演をしたことは その内容がマスコミに掲載されていたので 知っていましたが 日本を旅するなかで 彼が日本について どのようなことを感じたのか 番組ではそのあたりを ドキュメンタリー風に描いていて 面白かったです まず 最近 外国人観光客に人気があるという 渋谷のスクランブル交差点を訪れ こんな感想を述べます クレイジーな光景 資本主義の心臓のような場所 人の欲望と欲望が重なり合い みんな何かを追い求めている うーん 確かに書き手も 渋谷の交差点は苦手ですが 資本主義の心臓とまで 思ったことはないなあ(笑) そして 渋谷駅から山手線に乗り 車内で人々の様子を観察します 日本には 究極の経済的効率性があり それは完璧なシステムだと思う 日本の資本主義は 世界でも最も速い社会システムのひとつで 見事なほど完璧に組み立てられ 成長をもたらしてきた しかし 人がシステムのための部品のように感じる 資本主義の世界では 人間とシステムが逆転してしまう 人間はシステムのパーツに過ぎなくなる シンギュラリテイは 30年前に既に起きていたのであって それ以来 ずっと テクノロジーが人間を使ってきた うーん 車内の人々の観察で そこまで洞察するのか、、、 日本には ふたつのものが 混ざり合っているように見える 秩序のもとにある瞑想的な静けさ と クレイジーな混沌 そして 働き過ぎ 高度すぎるシステム ラッシュアワーのストレス 人々は 表面的には瞑想的な平静さを保っているが 内心は穏やかではないのであろう 観察していると それが段々見えてくる 再度 そんなことまで感じちゃうの?(苦笑) 日本における多くの会話 コミュニケーションには 見えない壁 ファイアウォール 防壁が あるように見える あまりに高く分厚く 複雑な防壁は 資本主義 民主主義のもとでは 社会を損なう恐れがある えっ ちょっと難しくて 何を言っているのか わからないのですが(再苦笑) 新橋のガード下の飲み屋では そこに居合わせた若い女性グループと 恋に関する会話を展開したあと こんな独白をします 都市では人々は淘汰され 適者のみが生き残る 東京での生存競争は壮大な争い まるでひどい戦争のよう だ 日本でこんな社会が出来上がったことは 本当に驚くばかり 素晴らしい文化 経済的 政治的な達成だ でも 間違いなく抑圧的だ シェリングは 悪には2種類あるといった ひとつは トランプのような 構造を破壊する混沌の悪 エントロピーを増大させる悪 もうひとつ 構造に宿る悪がある あまりに完璧な秩序は 悪なのである シェリングは 18世紀末のドイツ観念論を代表する哲学者で 悪についての考察を積み重ねた方で マルクスさんの 主たる研究対象のひとりです 構造の中に潜む悪 というアイデアは なかなか奥が深そうで 面白いと思います 長くなりそうなので 次回に続けます
高橋医院