オーファン受容体
ホルモンなどの情報伝達物質と その受容体に関する解説シリーズの最後に オーファン受容体の話題を紹介します 多くの読み手の皆さんは 初めて耳にする単語かもしれませんが オーファン受容体とは その受容体に結合して活性化するリガンドが 未だ同定されていない受容体です パートナーがわからない婚約者 のような存在?(笑) どうして そんな可哀そうな婚約者(?)が 見つかったかというと これまでの受容体の研究は 既知のリガンドに特異的に結合する 未知の受容体を検索する という方法がとられていました しかし近年の分子生物学的研究法の進歩により 受容体は *発現する部位(細胞膜や核内) *機能 *リガンドの種類 などによって分類され 上記の条件が同じ受容体は その遺伝子配列に共通性があることが 明らかになってきました そして 既知の受容体(Gタンパク質共役型や核内受容体)と 類似のアミノ酸配列を持ったタンパク質が 受容体として同定されるように なってきたのです これが オーファン受容体です リガンドもわからないし 機能もわからないけれど 受容体であることは間違いない そんなオーファン受容体が 世の中にはたくさん存在しています そして さ まざまなオーファン受容体が同定され その研究が進むにつれ これまで詳しい作用が 明らかにされていなかった物質が オーファン受容体のリガンドだった 既知のリガンドが オーファン受容体に結合し しかも既知の受容体に結合するときとは 異なる情報伝達を行っている そんな予想外の新発見が 次々と発表されました ということで 医薬品開発の世界では ヒトのオーファン受容体の同定や そのリガンド探しが活発化しています 全く未知の作用機序を持つ 新しい薬がでてきたり 既知の物質が 突然 新薬に生まれ変わる 可能性があるわけですから オーファン受容体とそのリガンドは まさに宝の山です オーファン受容体の多くは *核内受容体 *細胞膜貫通型の Gタンパク質共役受容体 のグループに存在しています これまでに同定されている 核内受容体の半数以上が リガンドも機能もわかっていない オーファン受容体ですし Gタンパク質共役受容体に関していえば ヒトゲノムには 約350種類のGタンパク質共役受容体の遺伝子が 存在していますが そのうちの約150種類が オーファン受容体です 宝の山は かなり大きいのです さて オーファン受容体として同定され その後の研究でリガンドが同定されたものを Adopted Orphan Receptorと呼びます 核内受容体のFXR LXR PPAR RXR などが代表例で これらは オーファン受容体として同定されたのちに 脂肪酸 胆汁酸 コレステロール代謝物 レチノイン酸などの 代謝に関連する化合物をリガンドとすること が明らかになり 今では 脂質センサーとして注目されていて 肥満 糖尿病 脂質異常症 との関連も脚光を浴びています このように 胆汁酸でも解説したように これまでは 単なる代謝産物と思われていた物質が 突然 受容体を活性化させるリガンドとして 生体内でさまざまな機能を発揮させる役割が判明する オーファン受容体がとても魅力的なのは そうした意外性にあります 但し 前回も説明しましたが Adopted Orphan Receptorのリガンドは 他の受容体とリガンドの関係に比し 特異性や親和力が低く 異なるオーファン受容体とも結合できたりする つまり オーファン受容体は より多くの種類の代謝産物と反応できる ということで (核内受容体と同じですね) 余計に複雑になってよくわからん という面もあるのです、、、 やっと探し当てた婚約者は 意外に浮気者だったりするわけですよ(笑) 宝の山の オーファン受容体 今後の研究が進んで 思ってもいなかった物質が オーファン受容体の新たなリガンドとして 脚光を浴びる場面を これから何回も楽しめることを 期待したいと思います そして そうして発見されたリガンドや関連物質が 生活習慣病などの新たな治療薬として 開発される期待もあります 未知のパートナー探し とても面白そうです!(笑) さて 今年のお勉強ブログは 今日が最終回です ときどき 今日のような趣味に走ったオタクな内容となり 恐縮でしたが(苦笑) 来年も ダイエット 老化 食欲 脂質異常症 咳や腹痛 などなど さまざまなテーマについて説明していく予定ですので 懲りずにお付き合いいただけると幸いです
高橋医院