慢性炎症が
生活習慣病の基盤になることを
説明してきました

慢性炎症が生活習慣病の基盤になることを示す図

では 
慢性炎症を治療できれば
生活習慣病を根本的に改善することが
できるのでしょうか?

慢性炎症を誘導する内因性因子である
過酸化脂質終末糖化産物(AGE)の生成を
別個に防ぐより

慢性炎症をダイレクトに抑制した方が
より効果的ではないか?
という「抗炎症治療」のアイデアです

日々の生活で苦労して節制して
生活習慣を改善しなくても
原因となる慢性炎症を治療してしまえば
良いじゃないか?

抗炎症治療の説明図

はい
そう考えたくなるお気持ちは
痛いほどわかりますが

残念なことに 
慢性炎症を制御できる薬は
まだないのですよ

上図の赤枠内に示す
慢性炎症を制御する方法が
色々試みられていますが
いずれも上手くいっていません

そのあたりが難しいところです


糖尿病の治療に用いられる
血糖降下薬の
ピオグリタゾン(アクトス)

高血圧の治療に用いられる降圧薬の
ACE阻害薬
アンギオテンシン受容体拮抗薬

高LDLコレステロール血症の治療に用いられる
スタチンなどには

慢性炎症を改善する抗炎症作用があると
期待されていますが
充分な効果は得られていません

やはり 
地道な努力で生活習慣の改善をするのが
王道です


そもそも考えてみれば
悪い生活習慣により生じる
運動不足 肥満などの
「内的ストレス」により
慢性炎症が起きてしまうので

悪い生活習慣により生じる運動不足 肥満が慢性炎症を起こすことを示す図

炎症の原因である
内的ストレスが取り除かれない限り
炎症は慢性化し続けて
生活習慣病になるのですから

なにも薬を飲んで慢性炎症を抑えなくても
生活習慣を変えて
炎症の原因となる「内的ストレス」が
生じないようにすればよいのです

慢性炎症を治療して
苦労の多い生活習慣の改善から
逃れようなんて
本末転倒ということでしょうか?

まあ そうは言ってもねえ(苦笑)


ということで 
慢性炎症を防ぐ手立ては
最後は生活習慣の改善
ということになります


<食事>

糖分や脂質を過度に摂らず
AGEを作らないように
飽和脂肪酸が溜まらないようにします

野菜 果物を多く摂取し

男性1日8g 
女性は7g未満の減塩を心掛けます

タンパク質や食物繊維を
多めに摂ることも大切です

食事療法の解説図


過激なダイエットは有害です

食事量を減らすだけだと
筋肉を落として
サルコペニアになってしまいますし
抗炎症性作用があるマイオカインの
筋肉からの分泌が低下し
慢性炎症が起きやすくなります


<運動>

目標は

歩行 それと同程度の身体活動を 
毎日60分

息がはずみ 汗をかく程度の運動を 
毎週60分

運動療法の解説図

運動により
骨からのオステオカルシン
筋肉からのアペリン
といった有用なホルモンの産生が
増強されます

運動でエネルギー消費され
ATPが枯渇すると
AMPキナーゼが活性化され
サーチュイン遺伝子が活性化され
ミトコンドリアの数が増え機能が上がり
抗酸化酵素が増えるといった
メリットもあります


一方で 
激しい運動をしすぎないことも大事です

運動し過ぎると
筋肉からIL-6 IL-8などの
炎症性の悪玉マイオカインが分泌され
慢性炎症が増強してしまいます


<ストレスを避ける>

ストレスが多いと
副腎皮質ホルモンが過剰分泌され
免疫能が抑制されて
慢性炎症が持続します

CTRA遺伝子という遺伝子があり
ストレスが多いと活性化され
慢性炎症を起こします

ストレスでCTRA遺伝子が活性化されることを示す図

CTRA遺伝子は
幸せ気分だと鎮静化されるので
炎症が起きにくくなると
報告されています

そういう意味でも 
ストレスを避けることは大切です


ストレスが慢性炎症の原因となることを示す図

ということで 
肥満による生活習慣病などが
慢性炎症により発症・進展することを
説明してきましたが

その解決策はというと
結局のところ いつものように
地道な生活習慣の改善に行き着きます

まあ 世の中 
そんなものですよね(苦笑)

高橋医院