腸内細菌叢が
免疫機能をはじめとするさまざまな生体機能に影響腸内細菌叢の生体機能への影響をまとめた図

色々な疾患の発症・進展にも関わることを
紹介しましたが

腸内細菌叢の疾患への関わりをまとめた図

いちばん重要な腸内細菌叢の多様性の形成には
さまざまな要因が関与し

腸内細菌叢の多様性の重要性を示す図
腸内細菌叢の多様性についてまとめた図

遺伝的要因の関与は少なく
生活習慣 食生活の影響が大きいことが
明らかにされています


<腸内細菌叢の多様性に影響を及ぼす生活習慣>

@喫煙

喫煙は腸内細菌叢の多様性を減少させ
禁煙により改善します

@ストレス

ストレスで腸管の蠕動運動が変化すると
腸内環境が変わり
腸内細菌叢のプロファイルも変わります

@運動

運動するラットでは酪酸産生菌が2倍に増え
ラグビー選手は
腸内細菌叢の多様性が高く 細菌数も多く
多様性の高さは運動量 タンパク摂取量に比例すると
報告されています

@睡眠時間

時差や寝不足により多様性が失われる
という報告があります


腸内細菌叢の多様性に影響を及ぼす生活習慣について説明する図

<食事の影響>

腸内細菌叢の多様性の形成に
いちばん大きな影響を及ぼすのは
なんといっても食事内容です

@食事期間の影響

年余に及ぶ長期的な食習慣が
その人の腸内細菌の多様性を規定しますが

1週間ほどの食事変化でも
腸内細菌叢の変化は起こります

しかし その変化は長続きするものでなく
食事内容をもとに戻すと
腸内細菌叢はわずか数日で元に戻るとされています

プロバイオテイクスなどによる
腸内細菌叢の改善を目指した治療を行う際には
そうした点を充分に考慮する必要があると思われます


@食事内容・栄養素の影響

食事の動物性タンパク 脂質が多いと
多様性が下がり

炭水化物 食物繊維が多いと
多様性が上がる

と報告されています


<栄養素別の影響>

@炭水化物

最も影響が大きい栄養素は炭水化物で
特に難消化性の水溶性食物繊維 オリゴ糖などにより
短鎖脂肪酸産生量が増加し 抗炎症作用を示します

@食物繊維

短鎖脂肪酸を産生させ
GLP-1産生亢進などのさまざまな利益をもたらします

食物繊維による短鎖脂肪酸産生を説明する図

野菜 穀物を中心とした食事を摂ると
食物繊維を分解できる菌が多く存在するようになり
短鎖脂肪酸の量も増え
細菌叢の多様性も高くなります

食物繊維の摂取で細菌叢の多様性が高まることを示す図

@タンパク質

多様性は上げますが
食物繊維で増えるタイプの細菌を減少させ
硫化水素などの有害物質産生菌が増える
とされています

@脂質

飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸では
増加する腸内細菌の種類が異なり

低脂肪食 不飽和脂肪酸などは 
有益な細菌を増殖させますが

高脂肪食では
Clostridium属が増え
その代謝産物の二次胆汁酸(デオキシコール酸 リトコール酸)が増え
肝がん発症などのさまざまな不利益に関わります


<食事内容による影響>

@動物性食品

肉類に含まれるコリン カルニチンなどが
腸内の連鎖球菌により代謝されると
動脈硬化や心血管病の原因となるTMAOが増えてきます

肉類の摂取でTMAOが増えることを示す図


@高食物繊維 低脂肪食

腸内細菌叢の多様性が増し
Treg分化を誘導する酪酸産生が増加する一方
炎症マーカー 大腸がん発生に関わる
二次胆汁酸のデオキシコール酸の産生が低下します


@低食物繊維 高脂肪食

腸内細菌叢の多様性が低下します


ということで
腸内細菌叢に望ましい食事
*野菜 果物の種類が多い

*食物繊維を多く含む

もので

食物繊維や野菜が腸内細菌叢に望ましいことを示す図

逆に望ましくないのは
砂糖や加工食品の多い食事です

そして
摂取する食品の種類を増やすことが
細菌叢の多様性を保つことに
重要になります

しかし 
現代の食生活では 摂取する食品の種類が減っていて
ご先祖さまは1週間に150種類の食品を食べていたのに
現在は20種類未満で
そのほとんどが
トウモロコシ 大豆 小麦 肉が原料の加工食品です

普段の食生活で 充分に注意すべき点と思われます

腸内細菌叢に好ましい食品 好ましくない食品をまとめた図

<好ましい食品>

具体的には
*コーヒー ダークチョコレート
*ナッツ
*高脂肪ヨーグルト
*ワイン チーズ
などです

@チーズ

伝統的な製法のチーズには 
たくさんの微生物が存在していて
腸内細菌叢の多様性を高める働きをしています

しかし 加工度の高いチーズはダメです

また上述したように
食べ続けないと
変化は数日でもとに戻ってしまいます

@チョコレート

カカオ由来のフラボノイドが重要で
ビフィズス菌 ラクトバチルス菌などの善玉菌が増加し
腸内細菌が酪酸などを産生しやすくなります

プレバイオティクスのサプリメントになる可能性も
示唆されています


<好ましくない食品>

@食品添加物 人工甘味料

腸内細菌叢を変化させて 耐糖能の悪化を招きます

細菌の総数と種類が大幅に減少し
特に健康に良い細菌への影響が大きいとされます

但し 影響は人により異なり
それはもともとの腸内細菌叢プロファイルの差異によります

また摂取をやめても影響は
3か月間続くとされています

ジャンクフードを食べる人

@ジャンクフード

悪玉のバクテロイデスが増加し
善玉のビフィズス菌は半分に減少し
食物繊維を分解するプレボテラは半減します

多様性が消失し
胆汁酸抵抗性になり
新たな代謝産物 化学物質を産生し
悪さをする可能性も指摘されています

しかし 食物繊維を多く摂っていれば
悪影響は少なくてすみます

@アルコール

過剰摂取により 
腸管上皮のバリア機能が低下し
酪酸産生菌の割合が減少するので
大酒家は要注意です

 ほうない

高橋医院