ビタミンのまとめ
脂溶性ビタミン 水溶性ビタミン それぞれのたくさんのメンバーについて説明しましたが 最後にまとめをしたいと思います
ビタミンは ヒトの生体内で日々行われている活動において 決して主役ではありませんが なくてはならない重要な脇役です 脂溶性ビタミンの A D E K は それぞれ特徴的な働きを有しています一方 水溶性ビタミンの中心となるビタミンB群は 8種類のメンバーがいて 主に代謝に貢献しています
ヒトの体の活動の基本は 細胞のなかで 食物から摂った栄養素を酸素を利用して エネルギー(ATP)に変えることです
そのため 食物から摂取したタンパク質 脂質 糖質の三大栄養素を 細胞内で分解・代謝し ミトコンドリアでエネルギーに変換します
そうしたシステムが 体内のいたるところで 日々休むことなく行われています このシステム *糖質をグルコース・ピルビン酸に変換する解糖系 *脂質を脂肪酸に変換するβ酸化 *タンパク質をアミノ酸へ異化する系 によって 三大栄養素はアセチルCoAに変換され
アセチルCoAは ミトコンドリアでTCA回路に入り 連続した反応により 電子伝達体のNADH・FADH2が生成され 電子伝達系はNADH・FADH2を使って呼吸鎖反応を行い 最終的にエネルギーのATPを産生します
ビタミンはこうした連続した一連の反応の各所において 補酵素として働いて反応を円滑に進めているのです ビタミンはたくさんの大切な働きを有していますが 極端なことを言うと このエネルギー産生への貢献が いちばん重要かもしれません 特にビタミンB群の貢献は大きく 繰り返しになりますが 三大栄養素の代謝に深く関わっています *B1は 糖質担当 解糖系で得られたピルビン酸をアセチルCoAに変換します *B2は 脂質担当 β酸化で得られたアシルCoAをアセチルCoAに変換します *B5・パントテン酸は 三大栄養すべてに関わり CoAに変換され B1 B2と協力して 三大栄養素のアセチルCoAへの変換を助けます *B7・ビオチンは 糖質 脂質担当 糖質のアセチルCoAへの変換 脂質の脂肪酸への分解 脂肪酸のβ酸化によるアセチルCoAへの変換 を助けます これらビタミンB群の働きにより 三大栄養素はアセチルCoAに変換され TCA回路に入れるようになります 栄養素のエネルギー(ATP)への変換の スタートが切られるわけです
また上述したように TCA回路では 電子伝達系で使われる電子伝達体の NADH・FADH2が生成されますが
この電子伝達体のNADH・FADH2生成にも ビタミンB群は関わり *B2は FADに変換され FADH2の基になります *B3・ナイアシンは NADに変換され NADHの基になります
こうして 電子伝達系で 電子伝達体のNADH FADH2は呼吸鎖を形成する分子と 電子の受け渡し反応を連続して行い その結果 最終的にエネルギー・ATPが産生されます
一方でビタミンB群は エネルギーのATPだけでなく 遺伝子のDNAの合成にも重要な役割を果たします *B12は 同じビタミンBメンバーであるB9・葉酸に働きかけ DNAを作るピリミジン塩基(シトシン・チミン・ウラシル) の合成を促進します *B9・葉酸は 上述したB12の作用によりピリミジン塩基に変換され さらに やはりDNAを作る核酸の原料となる プリン塩基(アデニン・グアニン)の合成を促進します
こうして生命現象の根源となるDNAの合成を助けます さらに 体の構成成分であるタンパク質の合成にも関わり *B6は 食事で摂ったタンパク質をアミノ酸に分解し 体内でアミノ酸からタンパク質を作るのを助けます こうして作られたタンパク質は さまざまな機能を発揮して生体の活動に貢献します
つまり 栄養素を代謝して 生体活動に不可欠なエネルギーを作り そのエネルギーを用いて 遺伝子 細胞 タンパク質を作ることに ビタミンはB群を中心にして大きく貢献しているわけで ビタミンがなかったらヒトは成り立たないわけです 他にもビタミンは 抗酸化作用などさまざまな重要な働きをしています ビタミンの重要性を理解していただけたでしょうか? 来週から ビタミンと並ぶ重要な微量栄養素である ミネラルの解説を始めます
高橋医院